腎臓で起きた症状や病気をメインに内科的治療を行っていく診療科です。
日本腎臓学会が認定する腎臓専門医である当院長が担当します。
腎臓とは、血液から余分な水分や老廃物等を尿として排泄する臓器です。腎臓が悪くなると、余分な水分や老廃物がたまることで、むくみや息切れ、食欲低下や体調不良などの症状が出てきます。
尿を作る以外にも、腎臓では赤血球を作るために必要なホルモンやカルシウムの吸収にかかわる活性型ビタミンDを作っているため、腎臓が悪くなると、貧血や骨粗鬆症を合併してきます。また、腎臓は血管の塊でできているような臓器であるため、血管の傷むような病気と深い関りがあります。例えば、糖尿病や高血圧、高脂血症といった生活習慣病は腎臓病になるリスクとなるのです。
腎臓病の恐ろしいところは、病状が進行するまで特に大きな症状が出ないことです。症状が出た時には、透析といった腎臓の仕事を肩代わりしてくれる治療が必要になることがあります。ですので、健康診断などの尿検査、血液検査での腎機能評価は早期発見にとても重要です。早く見つけて早く治療すれば、透析になることも避けられる可能性があります。年1回は健康診断等で尿検査、腎機能検査を受けるようにしましょう。

以下のような症状があれば、一度ご受診ください

  • 健康診断で尿潜血やたんぱく尿を指摘された
  • 身体にむくみがある
  • 尿が泡立っている
  • 倦怠感の原因が不明
  • 透析患者さんの体調不良

異常の原因を調べるために、尿たんぱく定量検査、尿沈渣等を行い、必要であればさらに詳細な検査も行います。
当院の検査機器で、迅速な尿検査が可能です。

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腎臓内科でみられる代表的な疾患

たんぱく尿、血尿、腎炎(急性、慢性)、ネフローゼ症候群、腎不全、慢性腎臓病、高血圧症、透析に関係した合併症
など

たんぱく尿

たんぱく尿というのは、3代栄養素の1つであるたんぱく質が尿中に基準値以上排泄されたものをいいます。本来であれば、栄養が尿にでてしまっては困ります。
例を挙げると、腎臓は「ざる」のような働きをしています。汚れた野菜を「ざる」に入れ水で洗うと、排水溝に流れていくのは泥や汚れた水で、「ざる」の中には野菜が残ります。ここでいう野菜がたんぱく質であり、排水溝に流れていく汚れた水が老廃物を含んだ尿、ということになります。つまり、たんぱく質は尿に漏れてはいけないのです。健康な方であれば、たんぱく質の1日の排出量は100mg未満とされています。
この排出量が1日で150mg以上の量が排出されるとたんぱく尿と診断されます

たんぱく尿がみられる場合、つまり、排水溝に野菜そのものが流れてくる場合はどんな時でしょう? そうです。「ざる」に穴が開いた時です。つまり腎臓という「ざる」に穴が開いてたんぱく尿が出てきている、ということになります。
穴の開いたざる=穴の開いた腎臓が良いわけがありません。たんぱく尿がでる=腎臓が悪くなるということとご理解いただいて構いません。ですので、たんぱく尿を減らすこと、は腎機能を改善させることにつながります。

本物の「ざる」は、一度穴が開いてしまうと使えなくなりますが、幸いにも腎臓は臓器ですので、修復能力があります。しかし、たんぱくが漏れ続けると、修復にかける時間が追いつかなくなり、治らない状態になってしまいます。
たんぱく尿陽性、と診断されたら放置せず、できるだけ早く受診していただくことで、腎機能をそれ以上悪くならないようにすることも可能になります。

たんぱく尿が出るような疾患は以下の通りです。

糖尿病性腎症、糸球体疾患、尿細管間質性腎炎、多発性骨髄腫、溶血性疾患、横紋筋融解症、尿路(尿管、膀胱、尿道)での炎症、腫瘍、結石

ただし、生理的な要因(病的ではない原因)でたんぱく尿がみられることもあります。
例えば、激しい運動をした後、発熱やストレスの影響、起立時などに一過性のたんぱく尿がみられることがあります。受診により、病的なたんぱく尿かどうかの判別も可能になります。

尿潜血

尿中に赤血球(血液)が混じっている状態を指します。
目で見て赤い尿だと明らかにわかる場合は「肉眼的血尿」といい、見た目は普通の尿と変わらないものの、顕微鏡による検査で赤血球を5個以上確認される場合に「顕微鏡的血尿(尿潜血陽性)」といいます。

なお、尿潜血陽性と判定されたケースでも、生理的要因がある場合があります。例えば、運動を激しくした後、月経の影響、発熱や過労などが挙げられます。

また、何らかの病気が原因の場合、腎・泌尿器疾患であれば、炎症(腎炎(急性・慢性)、膀胱炎、尿道炎)や尿路結石(腎臓、尿管、膀胱)、腫瘍(腎臓、尿管、膀胱)、腎臓の外傷などによって、尿中に出血が混じるようになります。

何が原因で尿潜血が陽性なのかわかる場合は、その原因の治療を行います。尿潜血は陽性だが他に異常がない場合、遅れて尿たんぱくが陽性になる場合があり、それを見逃すと腎機能が低下してしまうことがあるため、定期的に検尿の検査を行う必要があります。

慢性腎臓病

慢性腎臓病とは

慢性腎臓病(CKD)とは、腎臓の働きが徐々に低下していく様々な腎臓病の総称です。現在、腎不全と呼ばれる腎機能が低下している患者さんの数は、世界的にも増加しており、日本では、約1330万人と推計されております。これは成人の約8人に1人に当たります。
CKDの発症や進行には、高血圧、糖尿病、脂質異常症等の生活習慣病が関係するほか、肥満、食塩の過剰摂取、過度の飲酒、喫煙などの生活習慣が深く関与しています。

CKDを治療せずに放置したままにしておくと、腎不全となり、人工透析が必要になります。
また、CKDの患者さんは、脳卒中や心筋梗塞といった、心血管疾患をおこすリスクが非常に高いことがわかっています。このような状況から、CKDは新たな国民病として認識され、厚生労働省や日本腎臓学会が中心となり、予防、啓発に力を注いでいます。

一方で、CKDは医療の進歩により、生活習慣の改善や早期から適切な治療を受けることで、CKD の発症や末期腎不全への進行を減らすことができる疾患となっています。多くの皆様にCKDを知っていただくとともに、CKDを発症させない生活習慣づくりに努め、CKDを早期に発見し、発見したCKDを重症化させないことが私たち専門医の務めと考えます。

当院では検尿異常をはじめとし、CKDと診断された後も、その進行抑制のための治療を行っております。適切な管理を行うことで、透析に入るまでの期間を延ばすことは十分可能です。当院では腎不全進行抑制のための食事指導を行っております。(要予約)腎不全になると、今までは普通に飲めていたお薬も、減量が必要になったり中止しなければならなくなったりすることがあります。他院から処方のお薬もすべて拝見し、減量、中止、他剤への変更等ご説明いたしております。

残念ながら治療の甲斐なく末期腎不全となり、人工透析が必要となった場合でも、適切な時期にシャント作製、透析導入を行うことで、安全に透析導入ができ、その後の予後の改善につながります。透析が必要な時期になりましたら、患者さんだけでなく、ご家族にも腎不全、透析についてのご説明をし、透析に関する知識の向上、精神的なケアにも努めております。

検査について

慢性腎臓病の可能性がある場合、原因の検索と現在の腎機能、合併症の状況などについて調べます。他のご病気の薬を飲んでいらっしゃる場合は、受診時の腎機能で継続内服が可能かどうか、減量が必要かどうかなどもお伝えいたします。

初診時に行う検査

  • 血液検査:現在の腎機能の評価、腎機能低下の原因検索
  • 尿検査:1日の尿蛋白量、塩分摂取量
  • 腎臓超音波検査:腎臓の形態異常の有無、尿路の異常の有無
  • 胸部レントゲン検査・心電図:心血管系の合併症の有無
合併症の検索として、必要時以下のような検査を行います。(基本的には年1回)
  • 血液ガス分析:体の酸性・アルカリ性のバランス評価
  • 心臓超音波検査:心機能の評価、弁膜症の有無
  • 頸動脈超音波検査:動脈硬化の評価、頸動脈の狭窄の有無
  • CAVI・ABI検査:動脈硬化の評価、慢性閉塞性動脈硬化症の有無
  • 骨密度検査:骨粗鬆症の有無

治療について

慢性腎臓病の治療は、病状の進行度により異なり、目指すべきは腎不全への進行を遅らせることです。

(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変) CKD診療ガイド2012 p.3 表2
(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変) CKD診療ガイド2012 p.3 表2

病気の進行はステージ1から5までの5段階に分けられます。

ステージ1と2では、腎臓には障害が見られますが、その機能は正常または軽度に低下している程度で、回復できる可能性があります。
原因が生活習慣病(糖尿病、高血圧、肥満など)である場合、それに対する治療(食事や運動による生活習慣の改善、薬物療法)が行われます。

ステージ3では、腎機能が約半分に低下しています。このステージに入ると慢性腎臓病(CKD)という病名が付きます。この段階では、むくみ、尿の異常(夜間頻尿など)、疲れやすさなどの自覚症状が出始め、腎臓専門医による治療が推奨されます。
原因となる疾患の治療や、生活習慣の改善(塩分の減少、低たんぱく食など)が行われ、腎不全に至らないように進行を抑える環境作りが進められます。

ステージ4では、腎機能が約30%未満に低下しており、この段階では腎機能の回復は難しくさらに腎機能が低下した時に、腎臓の働きを肩代わりする腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)について検討していく必要が出てきます。腎代替療法専門指導士である院長が、腎代替療法(腎移植、腹膜透析、血液透析)についてご説明します。腎機能が低下し、どうしても腎代替療法が必要になった時でも、あなたのライフスタイルに一番合った方法を一緒に考えさせていただきます。腎代替療法の準備もしながら、できるだけご自身の腎機能を長く保つための治療を行っていきます。このころになると、貧血や骨代謝異常なども合併してきます。

ステージ5では、腎機能が15%未満となるため、ちょっとした脱水や風邪程度でも急激に腎機能が低下し、腎代替療法が必要になることがあるため、療法選択をして、それぞれの治療を始めるための準備(シャント作製、カテーテル挿入、移植準備等)が必要となります。本当に必要な時に、適切な治療が受けられるよう、それぞれの代替療法が可能な病院へのご紹介も行い、スムーズに導入できるよう全力でサポートします。